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カシの森に住むイベリコ豚に会いに行く

スペイン南部、アンダルシア地方のウェルバ Huelva にあるアラセナ山脈 Sierra de Aracena は国立公園として保護されており、100年や200年もの年月を生きぬいたカシやクリの大きな木が茂っています。この山脈付近、特にアローチェ山頂 Picos de Aroche で多く見られる、ヒヅメまで真っ黒な黒豚がイベリア半島に3500年以上も前から生息すると考えられているイベリコ豚です。実はこの豚、周囲に生えているコルクの木やその他カシの木から落ちるどんぐりの実、クリの実、その周りに育つきのこや牧草を食べ、大自然の中でのびのびと育っている純エコブタなのです。

イベリコ豚の育て方には大きく分けて三つの種類があります。

こうして山の中、自由に放し飼いで家畜を飼う方法をスペインではモンタニエラ法 Montanela と呼びます。ベヨ−タ Bellota と呼ばれるどんぐりの実やクリ、きのこ、周りに生えている牧草などを食べながら山の中自由に放し飼いで育てられる方法です。この方法によりイベリコ豚は適度な食料を得、山の斜面の上がり下がりによってバランスのとれた運動をとり、脂肪が身体に細かくゆきわたりひきしまった豚に育つのです。次はピエンソ法 Pienso、又はセボ法 Cebo と呼ばれる方法です。ピエンソとはスペイン語で飼料という意味があり家畜にやるえさ、主に穀類をこう呼びます。イベリコ豚に与える飼料は主にとうもろこし、ひえ、粟の混ぜ合わせた物です。国の厳重な検査を通過し認められた飼料だけが与えられているか、一ヶ月に何回か環境庁の人が実際調査に来て確認します。この肥料を与えて育てる方法です。最後はリセボ法 Recebo と呼ばれている、最近では一番よく使われている方法です。乳離れした子豚をまず山に放し、ある程度の大きさまでモンタニエラ法で育てた後、最後の数ヶ月だけ集中的に飼料をやり太らせる方法です。

豚の重さをスペインでは@ アローバ arroba(1@=11,5kg)を使って表現します。生まれてから平均45日ほどで乳離れしたイベリコ豚はこれらの方法で13@、約150kgになるまで育てられその後食用にされます。3つの方法の中でもやはりモンタニエラ法のみで育てられたイベリコ豚は特別値も高く、それから作られるハモン Jamon(生ハム)はスペインで最も高級な生ハム“パタネグラ(黒足)”と呼ばれ珍重されています。

イベリコ豚の好きな木の実には次のようなものがあります。

  • Encina エンシーナ:かしの木,Bellotaと呼ばれるどんぐりの実がなる。
  • Alcornoque:コルクガシ、木の皮でコルクが作られる。もちろん樫科なのでどんぐりの実がなる。
  • Castana:クリの木、豚はもちろんスペインでは人間もクリを生で食べる。
  • Quejigo:かしわの一種。

豚の鼻をよく見るとホッチキスの歯に似たピアスのような小さな鉄の金具が取りつけてありますが、これは豚が土を鼻で掘り返し土中の植物の根や虫などを掘り返し食べる習性があるため、周りの木を傷つけないようにしてある工夫です。

自然と共存できる地球最後の家畜だと言われているイベリコ豚を1度見に行ってみませんか?